基礎研究

脊髄損傷後の脳可塑性研究

脊髄損傷後のラット脳の変化(可塑性)をFunctional MRIにて観察

脊髄が損傷されたとき、そこから離れた場所にある脳にはどのような変化が起こるのでしょうか?

脳機能画像(Functional MRI)を用いて脊髄損傷時に脳に生じる変化(可塑性)を明らかにしたのがスウェーデン、カロリンスカ研究所で行った研究です。

中位胸髄での完全脊髄損傷後動物モデルにおいて、脊髄損傷直後から大脳皮質の機能がダイナミックに変化していることを報告しました (Brain 2007、図)。


つまり、脳と脊髄は離れていますが、脊髄損傷の影響を脳は瞬時に感じてそれに対して反応します。

その後の研究により、以下を明らかにしました。

  • 脊髄損傷後の変化は脳のさまざまな部分やことなる脊髄でも生じていること(Exp Neurol 2008, Neuroscientist 2009)
  • 脊髄損傷後の脳可塑性が脊髄損傷後神経疼痛に関わっていること(Pain 2008)
  • 脊髄損傷後の感覚神経機能回復に脳可塑性が影響を及ぼしていること (Cell Transplant 2013)

脊髄損傷後の回復を期待して、現在さまざま治療開発研究が進められています。我々も骨髄幹細胞やMuse細胞を用いた移植治療の開発研究を続けています。

しかし、脊髄損傷後に脳に起こる変化を見逃してはなりません。脊髄損傷からの回復を考える際、脳をふくめた中枢神経系全体での回復を期する治療計画が重要であると考えています。

脊髄損傷後の可塑性は神経原生疼痛や神経機能回復に影響を及ぼします